大塚酒造・酒にまつわる話

生酒とは

 ビールの生は、常温においておいても味の点ではほとんど問題ありませんが、清酒の生は0度以下で保管しなければ味が変わってしまいます。清酒の生とビールの生には大きな違いがあるからです。清酒では米を分解してブドウ糖にする酵素アミラーゼを麹がつくりますが、ビールでその役目をするのは麦芽です。ビールの場合は、原料の麦から生える芽の部分にアミラーゼが含まれており、これが麦のでんぷんを分解します。具体的には、芽の少しでた麦芽を乾燥させた後、温水に漬けて、アミラーゼを溶けださせて、麦のでんぷんを分解して甘いブドウ糖液をつくります。それをろ過して、加熱殺菌したあと、酵母を添加して醗酵させます。したがって、ビールの場合、糖化と醗酵が別々に行なわれ、醗酵するときには、加熱殺菌で、アミラーゼは壊れてしまっています。

 ところが、清酒の場合は、糖化と醗酵が並行して進みますので、最後までアミラーゼは壊れていません。このアミラーゼが、酒の品温の上がることによって味と色に大きな変化を与えます。0度以下の温度で保管しなければ、アミラーゼの作用によって、古酒のような香りが強く出てきて、色は黄色になってしまいます。 そうしたことで、現在市販されている生酒には4種類があります。全く加熱殺菌していない本来の生酒と、タンクでの貯蔵段階では生のまま冷蔵庫に入れておき、瓶詰するときのみ加熱殺菌したものがあります。一般の清酒は、タンク貯蔵の時と、壜詰めのときと2回加熱殺菌をしますが、生酒の味や香りを残すため1回だけ加熱殺菌をするのが現在は一般的です。

 こうした生酒のことを、生貯蔵酒といい、そのように表示してあります。本来の生酒は、0度以下で貯蔵すると、加熱殺菌しなくても、しぼりたての新鮮な味が楽しめます。もっとも、冷蔵庫に貯蔵していても、わずかずつには味が変わります。しぼりたての春の味と、秋になって微妙に変化した味を飲み比べるのも楽しいものです。ついでに 生酒を凍らせてシャーベット状にしてスプーンで食べるのも面白いですし、こちこちに凍らせて、解け始めのアルコール分の強い氷温の酒を飲むのも乙なものです。

清酒  米(でんぷん)→ブドウ糖           →アルコール
           ↑               ↑
           麹(アミラーゼ)アミラーゼ活性  酵母
ビール 麦(でんぷん)→ブドウ糖 → 加熱殺菌    →アルコール
           ↑         ↓     ↑
          麦芽(アミラーゼ)アミラーゼ失活 酵母